2016年3月12日土曜日
お化けなんかいない(4)踏切
お化けはいないことになっているので、私の周囲にお化けはいないし、ありがたいことに私は実際にお化けを見たことがない。
お化けを見たという人は私の周囲にもさすがに少ないけど(ゼロではない)、なぜか私の周りには不思議な経験をした人が多く、いろんな話を聞く。
これは小学校の時に、学校の先生に聞いた話。
小学校三年生の時、担任の先生が産休に入ったので代わりに平本先生と言う男の先生が来た。
三十代半ばくらいのかっこいい先生で、すぐにみんなの仲間になった。
今にして思えば、天性子供に好かれる人だったんだろう。
「先生、足長いだろ。トシちゃんみたいだろ」と平気で言う。当時の私ですら「トシちゃんはちょっと」と思ったくらいなのに、なぜか「ま、いっか」と思えた。大好きな先生だった。
休み時間に先生が教室に居ると、みんなで先生の机を囲んで話をした。
先生は仕事中でも嫌な顔もせず、みんなの質問に答えてくれていた。
ある時、私が「先生、 お化け見たことある?」と聞いてみたら、先生は「あるよ」と言った。
「あるの?」
「お化けじゃないかな、と思うものは見たよ。先生の学生の時」
「それ、話して!」と言ったら、先生は快く「良いよ」と言って、こんな話をしてくれた。
先生が学生の頃だけど、先生と友達二人の三人で、夜に車に乗ってたんだよ。
途中で踏切があってね、遮断機がおり始めたから踏切の前で止まって待ってた。
向こうから、お婆さんが子供の手を引いて歩いて来るのが見えたんだよね。
ああ、お婆さんが 孫を連れて歩いてるんだなと思ってたら、そのまま遮断機が降りてるのに線路の中に入ってきたんだ。
「危ない!」って思ったけど、すぐに電車が来ちゃって目の前を通ってった。
完全にひかれたと思った。
先生達は三人ともすぐに車の外に出て、電車が通り過ぎるのを待ったんだ。
電車が行って、遮断機が上がって、絶対にお婆さんと子供はひかれてる、と思って線路を見たけど、何もないんだよ。
——お婆さんとその子は?
いない。影も形もないんだ。
えっ?!と思って呆然としてたら、先生の友達が「見たか?!」って言った。先生ももう一人の友達も「見た!」
三人とも見てるんだよ。でも、お婆さんも子供も居ないんだ。
三人で急いで車に戻って、帰ったよ。何だったんだろうなぁ、今だに不思議だよ。
「お婆さんが以前そこで亡くなったの?」と聞いたら、先生は「どうだろうね。わかんないけどね」と言ってた。
車で踏切を通ると、いつもその話を思い出す。
先生元気かなぁ…。