2016年3月10日木曜日

お化けなんかいない(2)鳴らない電話



お化けはいないと決めつけてから私の周囲からお化けは絶滅し、気楽な生活を送れるようになった。
私の周囲にはお化けはいないが、私の知り合いの周囲には不思議な偶然がしばしばある。


随分前のことだけど、仕事で営業マンと一緒にお客さんの所へ行った。
先方の都合で、一時間ほど待機する事になり、時間をつぶさないといけなくなった。

駐車場は満車に近かったので、駐車場の外には出られない。近くには車を置いたまま行けるような喫茶店もない。仕方がないので車の中で待つことになった。

ラジオはついていたけれど、車の中は暗いし、夜に近い時間なので外も暗い。駐車場内だから目に面白いものなど何もなく、大した接点もない別部署の営業マンだったから、ポツポツと仕事の話をすればそれで終り。沈黙の中、ぼーっと時間だけが流れた。

私「あの…」
営業マン「ん?」
私「…何か恐い話して下さい」
営業マン「は?」


共通の話題がない男の人と時間をつぶす時に私が持ち出すのは常にプロレスか恐い話だ。小学校の時分から成長がない。

営業マンは面食らいながらも、「恐いかどうかはわからないけど、僕に実際におこった不思議な話で良ければ」と前置きして、こんな話をしてくれた。



僕には年の離れた兄貴がいて、僕の子供の頃にその兄貴はもう家を出てたから、昔兄貴が使ってた部屋を僕が使ってたんだよ。

その部屋には使ってない電話があってね。兄貴は使ってたけど、僕は使わなかったから、そこから電話したこともないし、友達に番号も教えてなかった。普段はまず鳴らないし、そこにあるだけの電話。

その電話が、ある時鳴ったんだよね。明け方だったかな。僕寝てたんだけど、変な音がするな、何かなって思って目が覚めた。
そしたら、電話が鳴ってるんだよ。普段鳴らない電話だし、誰だろ?って思ってしばらく放っておいた。
暫くたって、止まったから、間違い電話かなって思って、もう一度寝たんだよ。

布団に入ったらまた電話が鳴り出した。どうしようかなって思って。
僕の友達には教えてないから友達じゃないし、家の電話がもう一台あって親戚はそっちにかけてくるから親戚じゃないし。
しばらく待ったけど鳴り終わらないから、しょうがないから取ったんだよ。

受話器を取って返事をしないでいたら、そのままプツって切れちゃった。

なんだ、いたずら電話か、と思って僕も切った。その後はもうかかってこなかったから、僕も寝ちゃった。

その後、兄貴の所に学生の頃の友達から電話があって、昔兄貴と仲の良かった友達が亡くなったって連絡が来たんだって。
亡くなったのが、ちょうどその、僕の部屋の電話が鳴った時間でさ。
偶然のいたずら電話だったのか、何か知らせたかったのか、それはわかんないけどね。

それ以来、あの電話は一度も鳴ってないよ。



そこまで話たら先方から「もう来ても良いよ」と電話があったので、そのまま終了。
不思議な話があるものだ。