2016年6月2日木曜日

映画「エリザベス」を久しぶりに見た



イギリスに行った時、ハンプトンコートを訪れた。
ハンプトンコートはヘンリー8世の頃に使われていた古い美しいお城だ。



お城の中に当時の食堂を再現した部屋があった。
いわゆる宮殿の食堂というイメージとはかけはなれた部屋で、むき出しの壁や木製のテーブルの上になんとなく乱雑に器やトレーが置かれていた。
イヤホンガイドのテープから聞こえる当時の食堂を再現した音を聞きながら、16世紀という時代のイギリスは、豪奢というより暗くて殺風景な雰囲気を持っていたんだなぁと思った。

エリザベス1世は、そのヘンリー8世の娘だ。

ヘンリー8世は天才的な王様だったらしいが同時に残酷な性質を持った人でもあって、次々と妻を変え、離婚のたびに前妻に罪を着せて殺している。


当時イギリスはカトリックの国だったが、カトリックが離婚を認めなかったので、ヘンリー8世はイギリス国教会というプロテスタントの組織を立ち上げ、カトリックから離れる。

離婚を認めないカトリック教徒からは「妾の子」と言われたエリザベスがこの映画の主人公のエリザベス1世である(エリザベスの母親のアン・ブーリンもロンドン塔で処刑されている)。


この映画は、日本的に言えば時代劇みたいに昔の様子を楽しめるもので、絵で見たヨーロッパの貴族の変な格好(首の周りに巻いたシャンプーハットみたいな襟とか、男性の貴族が履いてる提灯ブルマーみたいな半ズボンとか)がいろいろ見れる。

エリザベス1世を演じたケイト・ブランシェットのメイクとドレスもどれも凄い(実際彼女はおしゃれな人でもある)。
ただイギリスは伝統的にケチな人達が多いそうなので(イギリス人談)、実際にこれだけのドレスを日常着にしていたかどうかは疑問だが。(王室が豪奢になると国庫の破綻を招く例は歴史をひもといても枚挙にいとまがない)


この映画にウォルシンガムという人物が出てくる。
彼はエリザベス女王の治世を様々な面から支えた人で、諜報組織の長でもあり、敵の多かったエリザベスを何度も暗殺計画から救っている。
このウォルシンガムを演じたのは、ジェフリー・ラッシュで、彼は様々な映画で主役を演じた名優の一人だ。

この映画の中での存在感もやはり群を抜いていて、話の流れを知らなくても「きっと何かをする人だ」というのはすぐにわかるし、実際鍵を握る人物だ。

大物俳優が出て来たら「何かをするんだ」と期待するのはやはり当然で、だから「ダ・ヴィンチ・コード」のジャン・レノの存在はどうもよくわから(以下省略)。

このウォルシンガムがどれほどの辣腕家であったか、『暗号解読』という本の冒頭にたっぷり出てくるのでそちらを先に読んでおくとこの人の恐ろしさがわかって面白いかも知れない。


暗号解読〈上〉 (新潮文庫)
誰か「ウォルシンガム」という映画を作らんかな。