2016年4月5日火曜日

ママさんから学んだこと



女性は意外と呑み屋のママさんと知り合いにならない。
しょっちゅう飲みにいく女性ならば行きつけのスナックのママさんと顔見知りになるだろうが、私のように飲みにいかない人間は知り合いになる機会がない。
ましてお客さんがほとんど男性、というお店のママさんならばなおのこと知り合いになることはない。





以前、知人が繁華街で物販のお店をしていたので、一度だけ夜に手伝いに行ったことがある。
前を通る女性達がドレスだわ、信じられないくらい爪が長いわ、みんなきれいだわで、カルチャーショックを受けた。
そういういわゆる夜の蝶々の居る店には行く機会が全然ないので、働いているのがどんな人達なのか、よく知らなかった。


最近そういうお店のママと知り合いになった。
仕事の関係なので友達ではないが、せっかく知り合いになったのでいろいろ観察してみた。
理想の女性を演じている彼女達は、やはり素人の私とは全然違った。


私がお会いするのは昼なので、実際に彼女達が仕事をしている所は見たことはない。
ただ、仕事の直前にはお会いしたことがあって、その時は装いの完璧っぷりに感動した。
360度どこから見ても美しく、化粧は完璧、髪も完璧。ドレスに毛皮風のコート、ヒールの高い靴、高級なバッグ、照明の光に輝くアクセサリー。すべてが計算し尽くされ、「絶対に家には居ない女性」になりきっていた。
周囲の空気まで変わるような迫力に、「私なんかが生きててごめんなさい」と思った。
普段を知っている私が見ても息をのむほどだった。男性ならば言わずもがなだろう。

仕事用の装いが美しいのは「きてくれるお客様のため」なのだと思う。
美しい女性が接客するお店は、当然高い料金を取る。
高いお金を払ってでも来てくれるお客様に失礼がないように、という気持ちがないと、おそらくママは勤まらない。


仕事の時の完璧な美しさ以上に、私がすごいなぁと思ったのは、ママさんの空気を察する感覚だ。
普段着のママさんは、ジーパンにペタンコの靴、髪も簡単にまとめているだけだし、バッグだってごくごく普通の値段のもの。

持ち物も雰囲気も人を圧倒するようなことはないが、会うメンバーや話の内容に応じて、実は化粧の濃さを変えているんじゃないかと思ったときがあったのだ。

お互いにまだよくわかっていない時は信頼されるように知的なメイク、打合せに男性が入る時は髪もおろして少し女性的なメイク、くだけた雰囲気を演出したいときは髪をラフに結んでメイクも軽めというふうに、わからない程度に印象を変えている。


場の空気をつかみ、飲まれないように自分のペースに持っていく技術は素晴らしいもので、いつの間にか自分を中心に物事が決まるように周囲の気持ちをつかんでしまう。

こちら側は全員女性が対応したのだけれど、女性同士で接していてもイヤミがない。
時として気さく、時として厳しく、時として優しげ、というふうに相手の性格をつかんで自分を出す。
演じるというより、自分の中にある要素を選んで出している感じだ。その場の空気を読んで、誰にどう対応すれば良いか即座に判断している。

これはすごい人だと思った。


もっとも、全てのママがそうだという訳ではなく、おそらく違うママさんもたくさんいるんだろう。
たまたま私が知り合いになったママさんが、エネルギーと能力を持った人だったのだろうとは思う。

ぼんやりと生きている自分に活を入れられた気分だった。

女性は放っておくと、どんどんおっさんになる。
私の周りもおじさんみたいなおばさんがたくさんいるし、私自身半分おっさんだ。
ママさんから学ぶことしきりだった。





久しぶりにお絵描きした(レシートの裏)。ヘタくそですみません。
私の知り合いになったママはこんな感じのクールビューティーな女性。これだけの美貌がありながら、気っぷの良いチャキチャキした性格なんだから恐れ入る。