2016年4月14日木曜日

ママさんから学んだこと2



人間、同じような境遇の人とばかり接していると楽だが成長がない。
時には知らない世界の人と喋ることも大切だ。
文化摩擦は避けられないが、摩擦の向こうには発見がある。



私の仕事場は女性ばかりだが、私が担当しているお客様はほとんどが男性だ。
担当と言っても私の仕事場には、本来担当制はない。
各個人が得手の分野を勝手に広げ、そこに固定のお客様が付けばそれがその人の「担当」になる。


私は言葉で物を売るのがヘタだ。
その代わり、データ管理は得意だ。
経営者はたいてい多忙なので細かなデータを取らず記憶する。
時として曖昧になってしまう記憶を、確かなデータで補う秘書に徹してみたら、それを必要とするお客様に重宝されて、いつの間にかそれが私の担当になった。


男性相手の仕事をしていると、女性性は時として邪魔になる。
接客業なので最低限の身なりと身だしなみは必須だが、必要以上に女性的になるとそれはそれで邪魔になる。
自分への甘えと、「まぁ良いか」という面倒臭さとが加わって、いつしか半分おっさん半分おばちゃんの私になっていった。


そんな折り、飲食店のママさんと知り合いになった。
細かいことはすでに書いたが、彼女は美貌の持ち主である。

飲食店の女性は、女性性が一つの売りだ。
磨き上げた自分で勝負するから、女性としての気構えが素人とはまるで違う。
自分を美しく見せるための技術、化粧品の使い方、服や小物の選び方、髪型と爪等々、細かなことを積み上げて美貌を維持している。
女性の美しさは、努力して磨き上げるものなのだ。


若いうちだけ水商売を数年やって後はやめる、という女性もいるだろうが、自分で店を持つだけの気概とガッツを持った女性は常に自分の年齢と戦っている。
モデルや女優と同じように、雨後のタケノコのように、次々と若い世代が生まれて来る職種だ。
素人の私なんかには想像もできないほど、衰えのプレッシャーと向き合わなければならないのだろう。

それで生きていかなければならないから、ママさんは女性性を諦めることが許されない。
変化する自分を受け入れながら、美しい存在でなければならない。
ママさんを見ていたら、そういう覚悟を強く感じた。


男性のお客様と接していて学ぶことはたくさんあるし、自分の得手の分野を伸ばせることは楽しいが、忘れてはならないことは、「私は女性である」ということだ。
ママさんと私は立場も売りも全く違うけれど、違うがゆえに学ぶことがたくさんある。
今の時代と自分の年代は流行が合わないと思わずに、ママさん達のように自分に合う美を取り入れていくこと、変化と折り合いを付けて自分にしかないものを見付けていくこと、それが結局新しい自分を作り出すということになるのだと思う


恐ろしくて口に出したことはないが、多分私が「どうせ」という言葉を使ったら、ママさんは「どうせで自分が済むならそれで良いんじゃない?私達はそれでは済まない」と言われるだろう。彼女達にはそんな厳しさがある。

違う境遇の人達と接することは、発見の宝庫と接するのと同じ事なのだと思う。


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お客さんの便利屋になれれば本望。