2016年4月21日木曜日
ママさんは大変だ
星の数ほどある呑み屋さんにも一つ一つドラマがある、とよく思う。
自分の店を持とうと思った理由、大変だった雇われ時代、独立してからの苦労、お客さんをつなぎとめる努力等々、語り出せば止まらないだろうし、語られ出すと終電を逃す。
中にいる人とはまた違う視点で外から見たママさんの世界は「大変だ」の一言に尽きる。
お酒つながりの世界は「評価の世界」だと思う。
お酒に関わる全てのものが「良い」「悪い」で評価される。
食べログなんかはまさに端的に「評価の世界」を具現化していると思うけど、飲食店の中でもお酒を専門にする世界は極めてにはっきりと、お客さんがお酒を、お店を、グラスを、出し方を、店員を、別のお客さんを、評価する。
当然、お店の側も評価されることを前提に物事を準備する。
評価に耐えられないお店は淘汰されていくから、きめ細かい配慮と、自分のお店のポリシーから外れないか判断する決断力との両方がないと、呑み屋さんのオーナーは勤まらない。
「お店を出たお客さんがエレベーターで一階に着くまでに、ママは階段を駆け下りる。1階でエレベーターの扉が開いて出ようとしたお客さんを、優雅にお辞儀でお出迎え、お見送りをする。着物がだろうが上層階だろうが、汗一つかかず、息一つ乱さず、優雅にお出迎えとお見送り。それが出来なければママは勤まらない」という話をかつて聞いた事がある。
ほんとかいなと思ったが、多少誇張はあっても、それくらいのことを出来ないとママとは言えない、ということなんだろうと思う。
私がいつもお願いする美容師さんは、若い頃赤坂で働いていて、毎晩のように呑み屋さんの女性の髪のセットをしていたと言う。
当時は景気も良かったから、ママさんだけでなく普通のホステスさんも美容院でセットしていたそうで、「夕方になるとやってくるホステスさんの髪をどんどん仕上げて、きれいになったホステスさんが出勤して行く姿を見送ると、一日の仕事が終わった」と話してくれた。
今は美容院を使わず自分でセットする人が増えた、と美容師さんは言っていた。
かつてはママの定番だった「アリンコ頭」(うなじの後ろがアリンコのお尻みたいな髪型なのでそう呼ばれる。着物に合わせた髪型)が作れる技術者も景気の減退と共に減って行き、今では私の住む都市でも、本式のアリンコ頭を作れる美容師さんは一人しかいない、とかいう話も聞く。
そんな中、知り合いのママさんは毎日美容院でアリンコ風セット(もう少し簡単ぽい)を作り、柔らか物の着物を実に美しく着こなして、出勤して行く。
定番の◯ィトンも着物に合わせた手提げ型という徹底ぶりだ。
「毎日着物なんですか?」
「そう」
「髪も美容院で?」
「カツラではない」
それでもお客さんのは「中の上」とか言われてるんだから、大変な世界だ。
頭が下がる。
ちりめん洗える刺繍半襟/白地/白刺繍金糸入り
伊達襟に凝るのがおしゃれさん。
銀杏型 かんざし 和装 かんざし 黒色 金銀箔押し風霞 雲に小紋 礼装 かんざし
ママのキャラもあるけど、アリンコ頭にかんざしを刺してた日にゃ、もうりっぱな岩下志麻。