2016年1月27日水曜日

熟読のすすめ



いわゆる速読が出来ない。

速読でも熟読でも理解度に差はないといわれるが、速読で読むと「理解度は変わらないけど、記憶としてほとんどとどまらない」と感じる。
 自己啓発本とか実用書とか、読みやすさを重視して書かれた本は、速読でも充分に頭に入るだろうが、私が好きな小林秀雄の評論なんかは、速読ではとても太刀打ち出来ない。
必然的に、熟読になる。



小林さんの評論を読むのは挑戦でもある。
熟読にもいろいろな方法があって、傍線を引いたり記号を入れたりしながら文章を分解し、構成を図式化してしまうというのがシンプルで早い。
最初はそれで読んでみた。ほどなく、彼の作品は、それでは読めないと思った。
小林さんの理屈は細かいので、アバウトな分解では、ぼんやりとしか理解できない。
試行錯誤の末、単語を一つ一つ分解し、「どの単語がどこにかかるか」を明確にする為に一度英語に組み立て直す、という方法にたどり着いた。

そうやって読んでいくうちに、小林さんの文章は、日本語で読むと曖昧模糊としてイメージ先行のように見えるが、より論理的な文法を持つ英語に組み替えると、単語が全て収まるべき場所に収まる、論理的な思考の上に立って書かれた文章なのだということに気づいた。
例えて言うなら「DNAの二重螺旋」みたいで、思わぬもの同士が手をつなぎ、立体的に思考の体系を形作り、結論にたどり着く。これは思考の遊園地だと思った。

しおり無しでもどこまで読んだかわかるように読むのが熟読だと聞いた事がある。
文章を分解して読まないと頭に入らないくらい難解な文章が存在しているなら、挑戦しなくちゃ勿体ない。

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